Jフード・ダイアリーズ

疲れたらカレーを飲め、と或る人が云った

病んでいるのはどっちだ?

同僚のサトーさんが病んで仕事にこなくなってから、二ヶ月が経とうとしている。


サトーさんは仕事が遅くて、怒りっぽくて、こだわりが強くて、周りに合わせることができない、変なおじさんだった。


あちこちから嫌われ、心ない言葉を浴びせられ、陰口を叩かれた。もはや、サンドバッグだ。拳を振り下ろせば、サトーがいる。


サトーは孤立していた

孤独ではなく、孤立だ


それでも、やはり話し相手は欲しかったのだろう、無愛想なぼくによく話しかけてきた。サトーさんは負の感情を常に隠そうと苦心していたが、面白いように顔に出た。顔を見ていれば、心を読むことができた。ぼくは不器用な人間が嫌いではない。

だから

「サトーと何、話してんの?」

「サトーさんと仲いいよね」

とか言われても、気にしなかった。ぼくは仕事に関しては周りに合わせるが、それ以外のことでは、全く他人を気にしないことにしていた。

“自由”を得るにはそれしかない。



サトーさんの処世術は知らない。あまり考えていないのかもしれない。考えるという行為が苦手そうだった。用件を伝えると、よく誤解した。現代文の成績はよくなかったに違いない。



サトーさんは自分を貫き、尖ったオーラを発し続けて奮闘していたが、ある日を境に、パタリと仕事にこなくなった。


仕方ない、ぼくは思った。そういうことはままある。ここは退いて、自分に合う、もしくは我慢できそうな職場を探せばいい。


サトーさんはいい年した大人だし、所詮、他人だから、大して心配していなかったのだが、今日、“真実”をある人から聞いた。情報通のM子さんだ。


「誰にも言っちゃダメよ」


M子さんは念を押した。ぼくのことを信用していないのだ。


「サトーって、パワハラが原因でこなくなったんだって」


「君らのパワハラで?」


「何言ってんの? 課長よ、課長」


「いやいや、君らもけっこう」


「課長なの」


オーケー。で?


「あ、そうそう。サトーは無断欠勤じゃなくて、休職らしいよ。精神科の診断書も用意したみたい」


「休職? 戻ってくんの?」


「さあ」


サトーさんの職場復帰シーンを想像しようとしたが、うまくいかなかった。



サトーさんからは、たまにメールがくる。仕事の話は全くしない。話題はいつも猫だ。サトーさんちの猫は、うちで飼っていた猫にちょっと似ている。