予感
悪くない一日だった。
午前中は若干ごたごたしたが、何の事故もなく、昼休憩になった。
仕事はあと四時間。ちょうど半分。折り返し地点まできたことになる。
空は晴れているし、寒くもない。
一日が無事に終われば、とりあえずハッピーだ。
昼休みを終え、某女性利用者さんとクロスワードをしていると、ステーションのほうから、ざわざわした波動が伝わってきた。何かある。絶対に何かが起きた。嫌な予感がした。こういうときの予感は大抵、当たる。恐る恐る見ると、看護師たちがミツバチみたいに飛び回っていた。それを見て腕を組み、にやにやしている介護士の同僚。彼は言った。「新規の人が熱発してるらしい。で、世の中今はアレだろ?だからみんな大騒ぎなんだよ」
要するに、新規の入所者が発熱しているにもかかわらず、施設のロビーまできて、みんな困って大騒ぎしている、ということだった。
事前にどうにかならなかったのか。考えていると、同僚が楽しそうに言った。「(受け入れを担当した)課長はマスク、制服、スニーカーを交換したんだってさ。コロナだと困るから。ほら、めっちゃ手を洗ってる」
「こりゃ施設内感染が起きても不思議じゃないな」
「インフルだって、ガンガン広がる」
結局、入所にきたご老人は受け入れ拒否となり、帰っていただくことになった。平時でも、熱のある人は受け入れることができない。当然と言えば当然の話である。だが、わけがわからないといった表情をした、付き添いの家族を目にすると、色んな意味で何とも言えない気分になった。