禁煙家のグラフィティ

疲れたら水を飲め、と或る人が云った

ハンコ更新日

友人Fは形式にこだわるところがあって、ちょっとお高いハンコを定期的に買う。しかも、気まぐれに、目についたハンコ屋に入って。

 

自分がもし買うならネットで安いのを買う。できる限り、買いたくない。必要に迫られて印鑑登録したハンコは安物だし、わざわざ買っても、普段使うのはどうせシャチハタだ。さすがに100均のは…と思うが、高価なものはいらない。とはいえ、それを友に押しつけるつもりはない。

 

Fがハンコ屋に行くときに偶然一緒にいたら、ふらふらとついていく。

 

昨日はたまたまFのハンコ更新日だった。ショッピングモールの小さなハンコ屋に彼は迷わず入った。こんなところにハンコ屋なんてあったんだと感心してしまうほど、フロアの隅っこにそのハンコ屋はあった。

 

店長は白髪の爺さんだ。

 

Fはハンコの材質やら大きさやらをすぐに決めた。爺さんはオーダーを受けてから、トークを始めた。あまりにも突然のことで、わけがわからなかった。ハンコ屋にきて、話を聞かせられるとは思ってもみなかった。

 

爺さんのトークはハンコを否定した大臣の悪口に始まり、なぜかそれから自分が旧家出身という自慢につながって、東京はいいけどここはダメだ的な地域差別に展開して、果ては我々を批判し始めた。爺さんいわく、我々は真剣に生きていないのだった。その時点で、自分は店から離れたが、Fはにやにやしながら話を聞いていた。マスクをしていたからにやけた口許は見えないけれど、見なくてもわかる。こうなると、時間がかかりそうだ。Fは人様の話を聞くのが好きだった。聞いたあとで笑いものにするという悪癖を持ち合わせていた。ぼくも口が悪いので、似たもの同士かもしれないが、それでも爺さんの説教を聞く気にはならない。

 

コーヒーでも飲みに行こう。

 

 

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そういえば、ハンコを否定した大臣は地元選出の方で、まぁ、昔から人気はある。その方の名誉のために言っておくと、ハンコ文化を否定したわけではないそうである。効率化のために不要な儀式と化していた押印を省いただけ、というわけだ。自分はハンコ自体不要だと思っているが、なくしたらなくしたで不便が出てきそうだから、徐々に、減らしていくのがいちばんいいのかもしれない。もちろんそれは自分の偏見に基づいた一意見であり、ハンコ屋のGGと違って、人様を貶める気はない。